神戸市東灘区、灘区、中央区の保育園、幼稚園、小学生、中学生、高校生向け、アットホームなそろばんカルチャースクールです。

天城そろばん教室

そろばん先生ブログ

date | 2022.2.28
〜 エッセイ「なんとも愛おしい時間」 〜



いつもお世話になっているデザイナー 坂本さんより、子どもたちや保護者の方へ
エッセイが届きました。頑張っている人、すべての人に贈ります^^

================================
「なおらへん…。」

便器に跨り、涙を流しながら苦悶の表情で僕を見て訴えかけてくる息子の姿を見て、かわいそうと思いつつもその姿に力が抜け、なんだか吹き出しそうになってしまった。
かくいう自分も笑っている余裕はなく、お腹が痛くて腹をおさえうずくまり、彼の様子を見ていた。

これは今から少し昔の話。
ノロウイルスが流行していた時で、息子が保育園の時だったか、小学生の低学年だったかの時。彼が持ち帰ってくるウイルスの感染力はとてつもなく、瞬く間に罹患していく。
その当時(現在もだが)父子家庭というやつで、自分と彼とで生活していた。
一心同体のようなもので、一方が病気をすると共倒れとなるのであった。

共同生活の中でいろんなものを貰って免疫力を高め体を強く成長させていくのだ、と今なら思えるが、その時の自分はまだ若く、そのように構えていられる余裕は無かった。
若さ故、もあるが、キャリア形成において重要な時間を過ごしていた。(そう思い込んでいた、が正しい。これも若さ故。)
様々な人のご縁があって、その方々たちのご尽力があって、デザイン会社に勤めることが叶った。
これから、という時に離婚することとなり、息子を引き取ることとなり、二人での生活がはじまった。

楽観的な自分であるが、実際はなかなか過酷で大変だった。毎日の送り迎え、弁当の用意、明日の準備、洗濯、、、そして自分の仕事。
会社での時間の使い方も変えざるを得なく、深夜まで社に残り仕事をしていたものを早めに切り上げ帰らねばなくなった。
「もう帰るん??」などと嫌味を言われたこともあって、反論することもできず、溜め込んでいくことも多かった。
皆が頑張っているのに自分は…という典型的な思考に陥っていた。
(現在は??といえば、帰ってもええやん、と思っている。)

更に「熱があるから迎えに来て欲しい」と園から電話がかかってきて、早退の許しを貰い迎えに行くと、けろっとして笑顔で元気に遊んでいるではないか…(確かに熱はあるのだが…)
溜息をつきながら、いつもより早いいつもの帰り道をとぼとぼと二人して歩いていた。
鬱々とした気持ちの中、ちょっとした安心感があったのは、いつもの二人の世界と時間とがそこにあったからであろう。

翌日になると、前日の彼とは打って変わって熱に見合った容態へと変わり、念のため自分もと熱を計ると発熱しており、容態が悪くなった。

彼を疎ましい存在に思ったことは何度あろうか。(お前が選んだ道であろうに彼に責任など何一つないはずだ。)こんなことは数えればきりがなく、溜まりにたまったものを抑えきることができず、ついには壊れてしまい、精神を患うことになってしまった。

生きることに希望を見出すことができず、長い間、暗い中を彷徨っていた。
しかし時間というのは良い薬で、何もしないで過ごす時間というのは自分に一筋の光がさした(何もしなかったわけではないが…精神の容態が悪化する荒行も自分なりに考えて試したり…結果的に功を奏した。)
その光を辿っていくと、あらゆる色をつけた世界に辿り着くことができた。
久しぶりに見た色を持った世界はとても美しく、その時の自分はというと希望に満ち溢れていた。

所謂「躁状態」であったから、これを整える必要はあった。何か素敵なものに触れて湧き上がってくる感動が常にある状態だが、良いように思えるが不味いことも多々ある。
これも時間が解決してくれた。

崩壊とは、はじまりのはじまり。
大事な基礎となるものは残しつつも、余計のものは取り払い、新しいものを築き上げいく。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

よどみにうかぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

世の中にある人と棲(すみか)と、又かくの如し。」

 

なおらへん…
便器に跨り、涙を流し、僕に訴えかけてきた姿を見て、僕は吹き出してしまった。
そのまま、はははは(笑)と笑った。
「分かるよ、俺も同じだ。大丈夫。すぐよくなる。」
どうしようもない鬱々とした時間が、日常の中にある安心と幸せを感じる刹那の時間を思い出させる。

世とは自分が思いもよらぬ形に変わり、思いもよらぬ方へ進みだす。
行く道の反対の方向へ進みだすことも。

そんな時私たちはどうするのか。

子どもが放った言葉に言い返せないことがある。
口ごもってしまい、もごもごして、滅茶苦茶な事を言い返し、押さえつける。
僕は思った。
子どもは子どもなりに考えて生きていて、何か途方のない道を冒険しているのだ。
かつての私たちのように、現在の私たちのように。

道の悪い道を先に歩いてみせて、ほら、大丈夫と手を繋いで少しずつ歩いていく。
あれはお花だ、あれは虫だ、あれは川だ、あれは海だよ。
あの草は毒があるよ、蛇がいるから気をつけて…
いつの間にか、逞しい後姿を見せてくれるのだろう。
そして私たちと同じように迷いながら歩み続けるのだろう。

ちょっと先を歩いたぶん分かることがあるのだよ。
急いては転んでしまう、転ぶことも大事だがな。
ここに咲こうとしている花に水をあげよう。

 

—————————————————————————

さて、大変な時代を私たちは過ごすこととなりました。
思いのほか、長く、なかなか先が見えない展開の中生活していくのは、なかなか辛いものがありますね。
お疲れの方も多いのではないでしょうか。
そうもいかないこともあるのは、重々承知の上で申し上げることをお許しください。
が、しかし、息を抜くこともお忘れにならないで、と切に願います。
気楽に構えることによって見えてくることもあるかと思います。
集中している時というのは、物事へのピントがかなり接近して合っていると思うので、離して見てみる事でなにかしら見えてくることがあるかと思います。
辛い時間も過ぎ去ると、笑い話になったり、なんとも愛おしい時間だった、と蘇ってくることが多々ありますね。
現在の過ごしている時間もきっとそうなる。
子どもたちは、思っているより逞しく、何も考えていないようで深く考えている。
私たちが繋ぎ引っ張ってきた手は、もしかすると逆に引っ張ってもらっているのかもしれない。
ぎゃーぎゃー言ったり、騒がしくしたり、聞き分けがよくなかったりして、「こんの野郎…」などと思ったことも、思い出すと多々ありましたが(笑)支えられていたシーンもたくさんあったな、と思います。
共に乗り越えていきましょう。
息抜きも忘れずに…

https://www.youtube.com/watch?v=DxwaeJtEwGo

(絵・文)デザイン事務所 bow’s Design 代表 坂本 匠太

 

塾生募集中!オンライン授業実施中

天城そろばん教室では、対面授業とオンライン授業を選ぶことができます。
また、生徒のみなさんは、どんな時も専用のオンラインルームに入ることができ、
自宅から学びとコミュニケーションがとれる場を設けています。
ぜひ私たちと一緒に、計算力と算数力を伸ばしましょう!

入塾案内ページへ